トレーシングレポート事例-①
病院薬剤師から薬局で働くようになって半年ほどしたある時に経験した事例です。
HbA1cが6台から8台に増えてますね、間食とったりしていませんか?
甘いものは好きだけど、気を付けてるんですけどね
先生に怒られました。
こんなに急に上昇してくるのおかしいよな…、なにか原因がありそう
そういえば痛みでもらってる薬、なにか変わりないかな?あそこの病院は院内調剤でお薬手帳を活用していないから定期的に薬の変更などないかチェックしておかないと。
たまたま薬の説明書を持ち歩いておられたので、確認するとそこには
なっ、なんとプレドニン5mg2錠が1か月前から導入されていた(-_-;)
Aさん、これが原因だよ、ステロイドは血糖値をあげるからね。
このお薬の説明書は、糖尿病の先生にもみせたのかな?
痛みのこと診てもらってる先生にも糖尿病のこと伝えてるのかな?
どっちの先生にもきちんと伝えているよ
これは怖い薬なんだね。
本当にそうなのかな?高齢の方だし、糖尿病に対して病識薄いし怪しいな。
とりあえず、糖尿病薬はステロイド開始後変更などされていないし、今回のHbA1c上昇でも薬剤追加もされていない。ステロイドも急にやめることもできないしな…
このまま、次回受診日まで様子見ることは危険だよな(-_-;)再度受診してもらったほうがいいかも
Aさん、この状態のまま行くのは非常に危ないと思うから、もう一度二つの病院に受診してこの薬情とお薬手帳を見せて治療方針を再度見直してもらったほうがいいです。
今回のことはそれぞれの病院に報告はしておきますから、再度受診してください。
ステロイド薬の主成分はグルココルチコイド(糖質コルチコイド)です、このホルモンはインスリン拮抗ホルモンでもあり肝臓での糖新生を促したり、インスリンに対する感受性を低下させて末梢組織での糖利用を妨げる働きを持っています。そのためステロイド薬は血糖値を上昇させる作用を持つので高血糖をきたし糖尿病を悪化させる恐れがあります。糖尿病患者がステロイド薬を使用する場合は、血糖値の上昇の恐れがあるので高血糖の是正に努める必要があります
ステロイドホルモンはプレドニン換算で3mg程度が生理的に分泌されているため、それ以上のプレドニンを長期に服用した場合、副腎皮質からのステロイドホルモンが不足し、倦怠感・吐き気・頭痛・血圧低下などのステロイド離脱症候群がみられることがあります。自己判断で急に内服を中止しないようにすることが重要。
結局この患者は入院して治療をすすめていくことになりました。退院後はものすごく感謝されて、それ以降もすごく頼りにしてくれています。
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