認知症の薬、使い分けは?特徴と分類
超高齢化社会の日本において認知症患者の数は多く、今後も増加していくことが予想されます。現在、認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症を根治させる薬はなく、病状の進行を抑える薬・症状を改善させるような薬しかありません。今回はアルツハイマー型認知症について、また薬の使い分け、特徴と分類についてまとめています。
認知症について
認知症とは、さまざまな原因で脳細胞が破壊・減少し、機能が障害されたりすることで、ひどい物忘れや理解・判断ができなくなるなど、日常生活に支障が出てくる状態になることをいいます。
認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症などいくつかの種類がありますが、その中でも最も多いのは「アルツハイマー型認知症」といわれています。
アルツハイマー型認知症は、脳にある種のたんぱく質(アミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質)が異常に蓄積してしまうことで起こると考えられています。
認知症にはさまざまな症状があり、人によっても違いがあるといわれています。
大まかに、脳の細胞が壊れることによって、今までできていたことができなくなる「中核症状」と、その人のもともとの性格や置かれている環境によって見られる「周辺症状」に大別できます。
中核症状:認知機能障害、記銘・記憶障害はじめ見当識障害・実行機能障害・判断力低下など
周辺症状:幻覚・妄想などの精神症状と、昼夜逆転・暴言・暴行・徘徊・不潔行為・異食行動などの行動異常
認知症の治療に先立ち、認知症の原因疾患を鑑別し、臨床症状と生活機能障害を評価した上で介入を行う必要があります。
診断には、症状の聞き取りや記憶能力・問題解決能力・注意力・計算力・言語能力などの検査から総合的に判断されます。ミニメンタルスチール検査(MMSE)、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などの検査や頭部MRI・CT・PET・SPECTなどの検査をおこなうこともあります。
認知症の薬
現在、認知症の薬として、アリセプト(ドネペジル)、レミニール(ガランタミン)、リバスタッチ/イクセロンパッチ(リバスチグミン)、メマリー(メマンチン)の4種類の薬が認可されています。これらの薬は現時点では、アルツハイマー型認知症だけに適応があります。(アリセプトのみレビー小体型認知症にも適応あり)
そのため、認知症の薬の処方が検討されるのは、アルツハイマー型認知症と診断された場合に限ります。
アルツハイマー型認知症を根治する薬は現在のところありませんが、早期から認知症治療薬を服用することで症状の進行を遅らせることができ、ご本人らしく生活できる時間を長くすることが可能になります。
高齢の認知症患者では過剰反応や有害事象を生じやすいため、薬物療法は少量で開始し、緩やかに増量し、若年者の用量より少なく(small)、薬効を短期間で評価し(short)、服薬方法は簡易(simple)になるよう治療をすすめます(3S)。
中核症状に対する薬物療法
ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ)、メマンチン(メマリー)の4種類です。
周辺症状に対する薬物療法
幻覚・妄想→抗精神病薬が有効、錐体外路症状が少ない第二世代抗精神病薬が適切。
焦燥、脱抑制、攻撃性、暴力行為→抗精神病薬が有効、錐体外路症状が少ない第二世代抗精神病薬が適切。抗てんかん薬のバルプロ酸も有効とされている。メマンチンが有効なことがある。
不安・不眠→抗不安薬と睡眠薬が用いられる、しかしベンゾジアゼピン系薬剤では副作用に注意が必要である。
抗精神病薬の種類https://ph-mukkun.com/post-153/
抗うつ薬の種類https://ph-mukkun.com/post-102/
睡眠薬の種類https://ph-mukkun.com/post-67/
漢方薬の効果
中核症状の改善や周辺症状に有効であるという報告があります。
抑肝散:怒りを主とする精神症状や幻視・易怒性、不安・焦燥などに有効
抑肝散陳皮半夏:抑肝散の効果に陳皮と半夏の効果を足した薬剤で消化器症状の低下した患者により適しています
釣藤散:主に脳血管性認知症の周辺症状に対して改善傾向が認められています
家族のサポートが重要
認知症治療薬は、認知症を治したり、病態の進行を止めたりするものではなく、認知症の症状の進行を抑える薬です。
診察時に症状を伝えるとき自身の訴え(主観的)だけでなく家族の訴え(客観的)も重要となってきます、病態に対する正しい知識をもって患者と一緒に治療に臨む必要があります。
また服薬管理についても、内服を継続させること、間違って内服しないことが重要です。そのためにも薬の用法・用量、効果・副作用について正しく理解しておく必要があります。
認知症治療薬を飲んでいても症状に何も変化が起こらない、薬が効いていないのではないか?という思いから治療の継続に疑念を覚えることもあります。「症状に変化がない」は、症状の進行が抑えられている成果であり、薬を服用していなかったら、もっと症状がすすんでしまっていた可能性もあるのです。勝手に服用を中止したりせず、主治医とよく相談し、判断することが大切です。
副作用についてもアリセプトをはじめとするコリンエステラーゼ阻害薬の3薬は、服用初期に下痢や吐き気、嘔吐、食欲不振などの症状を起こしやすく、そのため、少量から投与を開始し、薬による反応に体を慣らしながら増量します。これらの消化器系の副作用は、徐々に治まっていく場合が多いです。
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