抗精神病薬の種類、特徴について
統合失調症とは
統合失調症は、主に思春期後期から青年期に発症し、幻覚や妄想、自我障害、認知機能障害などの特有の精神症状で診断される疾患。発症しやすい素因(脆弱性)と心理社会的な因子の相互作用によって発症。
回復するが再発しやすく、多くは慢性に経過する。
陽性症状:幻覚・妄想・思考障害と奇異な行動
陰性症状:万世紀に感情の平板化、思考内容の貧困化、自発性の低下
抗精神病薬とは
ドパミンの過剰により引き起こされた幻覚や妄想などの精神症状を薬剤により整えていくことにより改善する作用を持つもの
抗精神病薬の作用機序
脳内には主に4つのドパミン神経系が存在するがこれらをバランスよく制御することが抗精神病効果につながる。
ドパミン神経系 | 過剰 | 欠乏 | 抗精神病薬の作用(ドパミン受容体の遮断) |
中脳-辺縁系 | 陽性症状 | 陽性症状の改善 | |
中脳-皮質系 | 陰性症状 | 陰性症状の悪化 | |
黒質-線条体 | 錐体外路症状 | 錐体外路症状の出現 | |
視床下部-下垂体系 | 高プロラクチン血症 | 高プロラクチン血症の出現 |
抗精神病薬のうち従来から使用していた薬剤を主に『定型』、副作用軽減のため開発された薬剤を主に『非定形』として区別されている。定型抗精神病薬はドパミン受容体への親和性が高く抗精神病作用は強いものの錐体外路症状を主とする副作用が多い。非定型抗精神病薬はドパミン受容体への親和性が比較的弱く、他の脳内神経伝達物質の受容体へも作用し副作用も軽減された比較的新しい薬剤です。
性質の違いからSDA(セロトニン-ドパミン遮断薬)、MRTA(多元受容体作用抗精神病薬)、DSS(dパミン受容体部分作動薬)、SDAM(セロトニンードパミンアクティビティモジュレーター)に分類される
神経伝達系 | 抗精神病薬の作用(受容体の遮断) |
セロトニン1A | 抗うつ効果、抗不安効果(受容体作用) |
セロトニン2A | 睡眠が深くなる |
セロトニン2C | 体重増加 |
ノルアドレナリン | 起立性低血圧、めまい、射精障害 |
ヒスタミン | 体重増加、傾眠 |
アセチルコリン | 口渇・便秘・排尿困難 |
抗精神病薬の種類
定型抗精神病薬
急性期の興奮、幻覚、妄想など陽性症状の改善に有効。高頻度で錐体外路症状が発現する。
- ブチロフェノン系
- ドパミン遮断作用が強い。抗コリン作用やα1遮断作用を有するため鎮静作用などにも効果あり。
- 陽性症状に効果的、錐体外路症状や高プロラクチン血症が多い
- ハロペリドール(セレネース)
- スピペロン(スピロピタン)
- チミペロン(トロペロン)
- ブロムペリドール
- イミノベンジル系
- クロカプラミン(クロフェクトン)
- フェノチアジン系
- 抗ドパミンD2作用のほか、抗セロトニン作用、抗ノルエピネフリン作用で鎮静・催眠・抗精神病作用を示す
- α1遮断作用あり末梢血管拡張による血圧低下に注意。抗コリン作用や抗ヒスタミン作用による副作用にも注意。
- クロルプロマジン(ウィンタミン・コントミン)
- レボメプロマジン(ヒルナミン・レボトミン)
- ペルフェナジン(ピーゼットシー・トリラホン)
- プロペリシアジン(ニューレプチル)
- プロクロルペラジン(ノバミン)
- フルフェナジン(フルメジン)
- ゾテピン(ロドピン)
- ベンズアミド系:低用量でうつ作用、高用量で抗精神病薬
- 穏やかに陽性症状に効果、高プロラクチン血症が多い
- スルピリド(ドグマチール)
- スルトプリド(バルネチール)
- チアプリド(グラマリール)
- 穏やかに陽性症状に効果、高プロラクチン血症が多い
非定型抗精神病薬
陽性症状だけでなく陰性症状に対する改善効果が高い。錐体外路系の副作用は少ない。
- SDA(セロトニン-ドパミン遮断薬)
- 陽性症状に効果的、錐体外路症状や高プロラクチン血症が多め
- リスペリドン(リスパダール)
- ペロスピロン(ルーラン)
- ブロナンセリン(ロナセン)
- パリペリドン(インヴェガ)
- 陽性症状に効果的、錐体外路症状や高プロラクチン血症が多め
- MRTA(多元受容体作用抗精神病薬)
- セロトニン・ドパミン以外の多くの受容体にも作用する、過鎮静と体重増加がみられる
- オランザピン(ジプレキサ)
- クエチアピン(セロクエル)
- クロザピン(クロザリル)
- アセナピン(シクレスト)
- セロトニン・ドパミン以外の多くの受容体にも作用する、過鎮静と体重増加がみられる
- DSS(ドパミン受容体部分作動薬)
- ドパミンが過剰な状態では拮抗薬として、ドパミンが低下すると部分アゴニストとして作用する
- 副作用は全体的に少ないがアカシジアが多い。鎮静作用は弱い。初期に不眠・胃腸障害が生じやすい
- アリピプラーゼ(エビリファイ)
- SDAM(セロトニンードパミンアクティビティモジュレーター)
- 5HT1A、D2受容体に強く結合、部分アゴニスト作用。5HT2A受容体に強く結合、アンタゴニスト作用
- 副作用は全体的に少ない。アリピプラーゼと比較し強力なセロトニン系への作用、D2受容体への刺激作用が弱い
- ブレクスピプラゾール(レキサルティ)
抗精神病薬の等価換算表
抗精神病薬の等価換算は統合失調症の治療薬(抗精神病薬)の薬の量を計算するための方法で薬の量が適正かどうか、おおよその目安を知るためのものです。
COMHBO(地域精神保健福祉機構)のサイトがおすすめです。
抗精神病薬の副作用
錐体外路症状
パーキンソニズム:筋固縮・無動・振戦などの症状を引き起こす→減薬や抗コリン薬を併用
アカシジア:内的な不穏焦燥感により静坐不能となる→減薬や抗コリン薬の併用
急性ジストニア:
遅発性ジストニア
内分泌系
高プロラクチン血症を生じ、乳汁分泌・無月経といった症状を認める
悪性症候群
治療中に発熱・自律神経症状・意識障害などを生じる最も重篤な合併症
高力価の抗精神病薬開始時・増量時など、また身体的疲労や脱水、低栄養状態などが重なった場合にも発症する
過鎮静
認知機能障害
代謝障害
肥満・体重増加と脂質異常症、耐糖能障害などの代謝障害を生じることがある
てんかん誘発
抗精神病薬の種類 まとめ
抗精神病薬の種類と特徴、作用機序や副作用について今回はまとめています。これらのことが頭に入っていれば、服薬指導時スムーズに情報提供ができ、また副作用回避や早期発見につながります、相互作用のチェックにも役立ちます。
その他
精神神経系の薬について、他の記事も書いていますので是非参考にしてください。
気分安定薬について→https://ph-mukkun.com/__trashed/
抗うつ薬について→https://ph-mukkun.com/post-102/
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