気分安定薬って何?その種類と特徴について

2020年10月14日

今回は気分安定薬の種類と特徴についてまとめています。実際にあった投薬時のことを記載していますのでよかったら読んでいってください。実際にカルテを見ることができないので処方内容と患者の訴えなどから判断して投薬する必要があるので、そういった面からしても難しい病態です。気分安定薬の種類と特徴について理解しておくと服薬指導がスムーズに運ぶことができます。

今飲んでる薬で、全然効果が出ないので薬を変えてもらうことになりました。
今回出ている薬は何のお薬ですか?

今回出ているバルプロ酸ナトリウムはてんかんのほかに、躁うつ病の治療に適応があったよな・・・

最近の調子はどのような感じですか?

落ち込みがひどくなって、逆にテンションが上がりすぎることがあるんです
自分ではもうどうしようもなくて…

うつ病から双極性障害に移行したか、もともと双極性障害だったのかな…

このバルプロ酸ナトリウムという薬は、イライラや衝動性に対して効果があって、気分を安定させる作用がありますよ。
副作用には胃腸症状や眠気、肝障害…などあります。
血液のデータや効果・副作用などを見ながら薬の量を調節していきます。
この病気は内服を継続していくことが重要です、調子が良くなったからと自己判断で中止などは絶対にしないでくださいね。

双極性障害とは

気分が高まったり落ち込んだり、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気

気分安定薬とは

躁病とうつ病に対する急性期症状に対する効果と再発予防効果を持つ薬剤

  • リチウム
  • バルプロ酸ナトリウム
  • カルバマゼピン
  • ラモトリギン
  • 実臨床では上記4種類以外に第2世代抗精神病薬を使用することもあります

炭酸リチウム(リーマス)

  • 古くからある抗躁病薬、エビデンスが豊富
  • 抗躁・抗うつ効果あり、再発予防効果あり
  • 自殺の予防に有効
  • 効果発現に5~10日かかる
  • 400~600mg分服で開始、1200mg/日まで
  • 有効血中濃度:0.3~0.8mEq/L、中毒を呈する血中濃度:1.5mEq/ L以上(振戦・口渇→嘔吐・下痢・食欲不振、2mEq以上で意識障害・昏睡・せん妄・けいれんなど、3.5mEq以上で致死)
  • 腎障害、心血管疾患、脳障害には禁忌
  • 副作用:手指振戦、頻尿、口渇、胃腸症状、体重増加、腎機能障害、甲状腺機能障害
  • 妊婦への使用:胎児の催奇形性あり

バルプロ酸ナトリウム(デパケン)

  • 抗てんかん薬
  • 抗躁効果と再発予防効果あり、抗うつ効果は弱い
  • イライラ感や衝動性に効果、穏やかな鎮静効果
  • 剤形が豊富(普通錠、徐放錠、細粒、シロップ剤)
  • 400~1200mg分服
  • 有効血中濃度:40~120µg/mL
  • 肝排泄であるため、腎機能障害にも使用しやすい
  • 副作用:胃腸症状、肝機能障害、月経異常、眠気、血小板減少、白血球減少、血中アンモニア血症、頭痛、膵炎
  • 妊婦への使用:胎児の催奇形性、IQの低下リスクあり

カルバマゼピン(テグレトール)

  • 抗てんかん薬
  • 抗躁効果が強いが、抗うつ効果は弱い
  • イライラ、衝動性、疼痛に対する効果あり
  • 肝代謝時の酵素誘導による相互作用が多い
  • 200~400mg分服で開始、維持量600mg、最大1200mgまで
  • 有効血中濃度:3~10µg/mL、中毒を呈する血中濃度:8~10µg/mL以上
  • 副作用:眠気・ふらつき、めまい、無顆粒球症、汎血球減少症、肝機能障害、重篤な皮膚症状、聴覚変化
  • 妊婦への使用:胎児の催奇形性あり

ラモトリギン(ラミクタール)

  • 抗てんかん薬
  • 他の気分安定薬と異なり抗うつ効果が有意な気分安定薬
  • 重篤な皮膚症状には注意が必要
  • 投与量を段階的に上げていくため、十分な効果を得るために時間を要する
  • 単独投与時25mg/1回/日(2週間)で開始、50mg/1回or2回/日(2週間)→100mg/日(5週目)→200mg/日(6週目以降 維持量) 最大400mgまで。バルプロ酸ナトリウム併用時・代謝経路により用量調節のガイドあり
  • 副作用:吐き気、眠気、Stevens-Jhonson症候群、中毒性表皮壊死症などの重篤な皮膚症状
  • 妊婦への使用:比較的安全

気分安定薬の種類 まとめ

上記4剤以外にも、実臨床においては第2世代抗精神病薬を使用することもあります。


この病気は内服を継続していくことが重要で、怠薬・断薬により再発のリスクは有意に増すため、調子が良くなったからと自己判断で中止などは絶対にしないよう指導していくことが重要です

その他

精神神経系の薬について、他の記事も記載していますのでよかったら参考にしてください

抗うつ薬の種類→https://ph-mukkun.com/post-102/

抗精神病薬の種類→https://ph-mukkun.com/post-153/