睡眠薬の種類
バルビツール酸系睡眠薬は強力な催眠・鎮静作用を有するが強い依存性・耐性形成リスクに加え過量内服時の致死リスクの高さから現在は使用されていない。
現在睡眠薬は大きく分けて3種類
- ベンゾジアゼピン受容体作動薬
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
ベンゾジアゼピン受容体作動薬
従来からある睡眠薬。抑制系のGABAの働きを高めることにより催眠・鎮静作用を表する。抗不安、鎮静・催眠、抗けいれん、筋弛緩の作用を示し、鎮静・催眠作用が強く、抗不安作用の弱いものが睡眠薬に分類される。薬剤同士の鎮静・睡眠作用の違いは、薬剤特性よりも患者個人による差のほうが大きいといわれている。ただし薬剤ごとの作用時間の差には留意が必要。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬は構造によりベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系に分類される。非ベンゾジアゼピン系の薬剤のほうが睡眠構築への悪影響が少ないと言われている。
また半減期により超短時間型・短時間型・中間型・長時間型に分けられる。
ベンゾジアゼピン受容体作動薬はω1~ω5の5つに分類されている、このうちω1、ω2は中枢型である。ω1は主に催眠・鎮静作用に、ω2は抗不安作用・筋弛緩作用に関係しているといわれている。ω1受容体に選択的に作用する薬剤としてゾルピデム・ゾピクロン・エスゾピクロンがあり催眠・鎮静作用に比べ筋弛緩作用は弱く反跳性不眠や退薬症候を生じにくいとされる、ただ不安の強い患者には不向きな面がある。
- ベンゾジアゼピン受容体作動薬の副作用
- 持ち越し効果:鎮静・催眠効果や筋弛緩作用が翌朝以降まで持続することにより眠気・集中力低下・倦怠感・ふらつき・めまいなどの症状が覚醒後も認められることがある
- 記憶障害:
- 筋弛緩作用:筋弛緩作用により生じるふらつき、また転倒のリスクあり注意が必要
- 依存性・離脱症状:短時間作用型、高力価の薬剤において顕著であるが低力価・低用量であっても身体依存を形成する可能性がある
- 超短時間型
- トリアゾラム(ハルシオン):1回0.125~0.5mg/日、ピーク1.2時間、半減期2.9時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
- ゾピクロン(アモバン):1回7.5~10mg/日、ピーク0.83時間、半減期3.9時間、抗不安・筋弛緩作用(-)
- ゾルピデム(マイスリー):1回5~10mg/日、ピーク0.83時間、半減期2.3時間、抗不安・筋弛緩作用(-)
- エスゾピクロン(ルネスタ):1回1~3mg/日、ピーク1時間、半減期5時間、抗不安・筋弛緩作用(-)
- 短時間型
- エチゾラム(デパス):1回0.25mg~1mg/日、ピーク3時間、半減期6時間、抗不安・筋弛緩作用(++)
- ブロチゾラム(レンドルミン):1回0.25mg/日、ピーク1.5時間、半減期7時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
- リルマザホン(リスミー):1回1~2mg/日、ピーク3時間、半減期10.5時間、抗不安・筋弛緩作用(-)
- ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット):1回1~2mg/日、ピーク1-2時間、半減期10時間、抗不安・筋弛緩作用(+/-)
- 中間型
- フルニトラゼパム(ロヒプノール・サイレース):1回0.5~2mg/日、ピーク1-2時間、半減期7-24時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
- エスタゾラム(ユーロジン):1回1~4mg/日、ピーク5時間、半減期24時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
- ニトラゼパム(ベンザリン・ネルボン):1回5~10mg/日、ピーク2時間、半減期27時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
- 長時間型
- クアゼパム(ドラール):1回20~30mg/日、ピーク4-22時間、半減期36-116時間、抗不安・筋弛緩作用(+/-)
- フルラゼパム(ダルメート):1回10~30mg/日、ピーク1-8時間、半減期6-72時間、抗不安・筋弛緩作用(++)
- ハロキサゾラム(ソメリン):1回5~10mg/日、ピーク2-8時間、半減期42-123時間、抗不安・筋弛緩作用(+)
メラトニン受容体作動薬
2010年に発売。メラトニン受容体に作用することにより自然に近い生理的な睡眠を促します。入眠促進作用があるため入眠障害を中心とした不眠がその適応となるが効果は弱い。また睡眠時間延長作用はないため中途覚醒への効果は乏しい。メラトニンにより体内睡眠時計を調整するため睡眠覚醒リズム障害に対する効果がある
- メラトニン受容体作動薬の副作用
- 筋弛緩作用から生じるふらつき、転倒のリスク、認知機能への悪影響、依存や耐性形成のリスクはいずれも低い。翌日の眠気や頭痛が出現することがある。
- ラメルテオン(ロゼレム):1回8mg/日、ピーク0.75時間、半減期1~2時間。不眠症に対しては8mg、概日リズム睡眠-覚醒障害 特に睡眠相後退型に対しては1~4mgを就寝時間の数時間前に使用することがある。
オレキシン受容体拮抗薬
2014年に発売。オレキシン受容体を抑制することで覚醒系を抑制する。入眠促進作用に加え、中途覚醒時間を減らし、睡眠時間の延長にも効果が期待できる。
- オレキシン受容体拮抗薬
- 筋弛緩作用から生じるふらつき、転倒のリスク、認知機能への悪影響、依存や耐性形成のリスクはいずれも低い。翌日の眠気や頭痛、悪夢が出現することがある。
- スボレキサント(ベルソム):1回15~20mg/日、ピーク1.5時間、半減期10時間。
- CYP3A4を強く阻害する薬剤と禁忌
- レンボレキサント(デエビゴ):1回5~10mg/日、ピーク1.5時間、半減期50時間。
- CYP3A4阻害薬との併用時は2.5mgに減量して用いる
- 製剤的に安定しており一包化が出来る(スボレキサントは不可)
- 処方制限が2021年4月まである。
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