よく聞くアドヒアランスってなに?

アドヒアランスとは

アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることと定義されています。この言葉が広まったきっかけとなったのはWHO(世界保健機構)が出したレポート‘’Adherence to Long-term Therapies:Evidence for Action‘’であると考えられています。

コンプライアンスとの違い

服薬状況については、以前まではコンプライアンスという言葉が用いられていました。コンプライアンスは患者が医療者からの指示通りに服薬することを意味し、患者の受動的な行動を意味するのに対して、アドヒアランスは患者の能動的な行動を意味するものであり、その前提として患者自身の同意や納得を伴うものである点が大きな違いといえます。

補足、コンコーダンスとの違い

コンコーダンスという考え方もあります。これは、薬剤師がパートナーシップをとり治療に取り組んでいくことをいい、両者の主張を尊重しあうことを主眼に置いています。

アドヒアランスの確認・評価

患者本人からの聞き取り、家族からの聞き取り
残薬状況、空包数の確認
症状の経過や副作用の発生状況の確認
医師から十分な説明をうけ、納得した上で治療に望めているか

一つの情報だけでなく、たくさんの情報の中から総合的に判断してアドヒアランスを評価することが重要です。

アドヒアランス不良の原因

患者と医療者の関係が良好でない
治療に対する信頼性の低下
服用する薬剤数が多い
副作用に対する不安感
医療費負担
抑うつなどの心理状態
仕事・家事などの日常生活によるストレス・忙しさなど
医療機関へのアクセスの悪さ
医療システムの要因

アドヒアランス不良の原因は様々です、これにより十分な治療効果が得られなかったり、医師も正しく評価することができません。また間違った服用方法により思わぬ副作用が出てきたり、その結果医療コストがかさむことにつながってしまいます。

アドヒアランス低下の改善、向上に向けた方策

薬剤師や他職種の関与
用法・用量や服薬スケジュールの単純化・工夫
タペストリーやピルケースなどの活用
飲み忘れを防ぐ仕組み作り アラームのセット
家族や周りの支援
疾患に関する理解向上
薬物療法の意義とリスクに関する知識向上
薬の適切な服薬に関する知識向上
患者の声を聴くこと
患者との良好な関係作り
薬価や保険などの理解

患者のアドヒアランスを低下させる要因は様々あり、多角的に改善・向上に向けた取り組みが必要です。また患者が治療法を選択する際に医師からの情報だけでなく、多職種から情報を得ることは、患者の理解を深め治療に対する満足度を向上させ、より積極的に治療への参画が期待できます。服薬指導の場はそういったことに非常に有用な場であると考えられます。

まとめ

残薬の有無(コンプライアンス)の確認だけでなく、治療方針に対する理解や納得が十分あるのかどうか(アドヒアランス)という視点から、個々の状況をきめ細かく把握していくための個別化対応が強く望まれます。

アドヒアランスの向上については患者の利益につながり、また医療経済にも良い影響を与えます。薬剤師としてアドヒアランスを確認し、アドヒアランス不良の原因を探り、改善・向上に向け服薬指導することはとても重要な責務といえます。

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